こんにちは!
吉祥寺囲碁クラブ秀哉の「囲碁格言講座」の第一回目を公開します。
この講座は「格言」から囲碁のコツを学んでいこうという、基礎講座です。
今回は「二目の頭見ずハネよ」を学んでいきましょう。
是非、碁盤に並べながらご覧ください!
二目の頭見ずハネよ
まずは、格言の確認です。
相手の二目の頭をハネる手はとても大きいですよ、という格言で、二目の頭を「叩く」とも言います。
具体的に見ていきましょう。
二目の頭の例
このようにお互いの二目の石が接触していて、黒番だったとします。
黒はどのように打つのが良いのかというと…
黒1がGoodです!
これが、白の二目の頭をハネている状況で、とても大きな手なのです。
イメージとしては、
こんな感じです。
白の陣地の発展を制限しつつ、中央に向けて黒の勢力を作っています◎
また、
反対に白に、
白1と二目の頭をハネられると、
このように勢力図が大きく変わります。
黒が二目の頭をハネた図3と比べてみると、景色が随分違いますね。
どちらが先に相手の二目の頭をハネるのかがポイントだということです。
是非、図3と図6を見比べてみて下さい。
注意点①
さて、
また最初の図に戻ります。
「二目の頭」に関して注意点が二つありますので、解説しておきますね。
この時に黒番で、白の二目の頭をハネるのですが、
黒1は小さいですね。
同じ二目の頭でも、広い方からハネた方が良いのです。
この黒1は、
二線に行ってしまっているので、中央に比べて狭いのですね。(ヨセの段階になったときに良い手になります。)
白2~4と打たれると、白の二目の頭を叩くチャンスを逃してしまっています。
このように白に一歩先に進まれてしまい、白地が拡大してしまいます。
ということで、
二目のお尻の方を叩くのではなく、
二目の頭を叩いて、広いエリアが黒の勢力になるように持っていきましょう!
注意点②
もう一つ「二目の頭」に関して注意点があります。
それは…
相手が強い時です。
こんな時に、
黒1は良くないですね。
強い白二子に単独でくっついてしまっています。
白2と打たれて、黒1が一方的に弱くなってしまいます。
実戦で図16の黒1は現実的ではないかもしれませんが、
このような形の時にも、
黒と白に間があいているので、
黒1は良くない手になります。
白2~4と打たれて、黒×が切り離されてしまいます。
実戦でありそうな黒の良くない展開です。
ということで、
敵と味方の二目同士が、このようにぴたっと、同じ強さで競り合っている時(呼吸点の数が同じくらいの時)に、
黒1のハネが良い手になるのです。
OKでしょうか。
また、黒が多い時にはより強力です。
たとえばこんな風になっていたとします。
ここで黒番で、
黒1が好手ですね。
そして、白がアタリになっていて、この形は、
シチョウになります。
シチョウというのは、相手の二目の頭をアタリにしながら叩き続ける動きだったのですね。
是非、白の進行方向を止めるイメージでシチョウの動きを並べてみて下さい。
二目の頭をハネる実戦的な例
では、実戦でどのように「二目の頭」が出てくるのかを見ていきましょう。
「二目の頭をハネた方が良い局面」と、「ハネずにノビを選んだ方が良い局面」を一つずつご紹介しますね。
定石の学習にもなりますので、ゆっくり見ていってください。
ハネた方が良い局面の代表例
星から、黒△のように両側に模様を広げている構えを「両翼」と言います。
この構えに侵入していく手として、白1の三々が好手です。
「両翼に三々入り」という格言があるくらい有効な入り方なのです。
白1はこのように、どちらかに進んで陣地を拡大しようとしています。
なので反対に、対する黒はどちらかの道を止めることになります。
そして、どちらを止めるかを判断するために…
全体を見ます◎
例えばこのような局面だった場合、黒は下辺よりも右辺の方が大きくできそうですよね。
黒は、白が右辺の黒模様に進んでこないように…
黒2が良い対応になります。
全体の陣地のイメージを持ちながら、部分での手を決めるのがポイントで、
こんなイメージですね。
「右辺を陣地にする!」
という気持ちで黒2を打ちましょう。
では、
部分図に戻りますね。
黒2のオサエに対しては、白3と反対側に進みます。
この動きは、白1の三々入りが意図していた動きで、黒が止めてこなかった方に進んでいるのです。
白3は下辺に向かって、このように進んでいます。
さてここで接近戦です!
黒と白の二子同士が競り合っていますね。
白の進行方向を止めるイメージで、
次の黒は…
黒4のハネが良い手です◎
これが「二目の頭」ですね。
白の二目の頭をハネることによって、白地の拡大を防ぎつつ、右辺から中央にかけての黒模様を大きくしています。
この時、周囲に敵がいないということもポイントです。
後に例を挙げて解説しますが、周囲に敵がいると黒4のハネがキケンな場合があるのです。
さて、この後の展開としては、白5~黒12までが一つのよくある攻防です。
結果としては、
このように、白は隅の陣地を作り、黒は右辺から中央にかけて模様を作りました。
黒としては、白の二目の頭をハネたおかげで、白地を最小限に抑えることができたのです。
どうでしょうか。
白1~黒12までの流れを、是非碁盤に並べてみて下さい!
ハネではなくノビを選んだ方が良い局面
次に、「二目の頭見ずハネよ」の例外を見ていきましょう。
実戦で非常に多い局面として、
このような形がよくありますね。
黒の星に対して、白1と「小ゲイマガカリ」でカカリを打ちました。
対する黒が、
黒2と受けたら、白3などのヒラキを打って一件落着です。
シンプルな戦いですが、互角の「定石(じょうせき)」になります。
さて、
白1のカカリに対して、
碁盤を広く見たらこのような局面だったとします。
右上の黒は、「小目の小ゲイマジマリ」という力をためた構えですね。
ここで黒は、右辺に黒の勢力を作りたいと考えて(右辺に白が来ないようにしたいと考えて)…
黒2のハサミが好手です◎
こんなイメージで、右上の小ゲイマジマリと連携を取っているのです。
では、挟まれた白はどうしましょう。
右辺へのヒラキが打てなくなってしまいましたね。
こういう時にどうするのかというと…
色々な打ち方がありますが、白3の三々入りが良い対応です。
「辺へのヒラキをジャマされたので、代わりに隅をもらいますよ」
という気持ちで三々に入ります。
黒4のオサエに対して白5と反対側へ進むのは、先ほどの「両翼に三々入り」と同じ動きですね。
さて、ここで黒番です。
部分にズームインするとこういう状況ですね。
敵と味方の二目同士が競り合っているので、
黒6とハネて、二目の頭を叩きたいのですが、今回は背後に白×がいます。
このように敵が周囲にいる時は、二目の頭であってもハネるのは危険なのです。
どのようにして咎められてしまうのかというと…
白7、9と打たれて、黒が困ります。
こうなると、いずれかの黒石が取られてしまうのです。
黒10と打って辺の黒を助けても、白11と打たれて黒△が取られてしまいます。
白×がいるせいで、
黒三子がこのように囲まれてしまっていますね。
こうなると取られてしまうのです。
例えば黒12と抵抗したとしても、
白13~19まで、丸ごとアタリになって取られてしまいます。
石の取り方としておもしろいので、是非並べてみて下さいね。
ということで、
白1のカカリ、黒2のハサミから白5までの展開になったときに、
次の黒はAとハネたいのですが、白×がいるので…
黒6のノビが正しい対応になります。
周囲に敵がいる時には、ハネではなくノビを選んだ方が良いのですね。
そして、この後の展開としては、
白7~11までのような戦いになって、一件落着です。
白は白×を捨てて隅の陣地を取り、黒は挟んだ側に勢力を作りました。
右上には小目の「小ゲイマジマリ」があったので、こういう景色ですね。
白1~11の手順を何回か碁盤に並べてみて下さい。
黒はハサミを打ったことで、このように右辺の模様が大きくなりましたね。
白1がいることを確認して、黒6のノビを打つのがポイントでした。
まとめ
まとめますと、
お互いの二目が競り合っている時に、黒1のハネが好手で、これが「二目の頭」を叩いている状況です。
相手の二目の頭をハネることによって、
このようなイメージの勢力図になり、黒が有利になっていきます。
具体的な例としては、
「星」+「黒△の両翼」の構えに対して、白1の三々入りをしたときに出てきます。
黒4が、白の二目の頭をハネた手ですね。
白地を最小限に抑えて、黒模様を大きくすることができました。
また、「二目の頭見ずハネよ」の格言が当てはまらない例として、
この攻防の黒6がそうでした。
白1という敵の存在を見て、黒6のノビを選ぶことがポイントでしたね。
・敵と味方の二目が競り合っていたら、ハネを打つと有利になる
・でも、近くに敵がいたらハネではなくノビを選ぶ方が安全
どうでしょうか。
図62と図63はどちらも「定石」という互角の攻防ですので、是非碁盤に並べて確認してみて下さい!
また、今回の概要と参考棋譜をPDFファイルにまとめましたので、こちらもご活用ください。
【格言講座①】「二目の頭見ずハネよ」のまとめプリント:
https://syuusaigo.com/kakugen-1.pdf
では、最後まで読んで下さりどうもありがとうございました。
次回もよろしくお願いします!